医師不足、医師の業務過多が問題になっている昨今、病院勤務医の負担軽減策の一つとして、「必ずしも医師が行う必要のない業務を分担し、勤務医の負担軽減を図る」ことを目的に、2008年の診療報酬改定において【医師事務作業補助体制加算】が新設されました。
この制度は、医師の事務作業を補助するスタッフ、すなわち医師事務作業補助者を配置した病院に入院の医療費を加算する仕組みです。この制度が設けられることにより、医師事務作業補助者(メディカルセクレタリー)の業務を4種類定義するとともに、実施できない業務についても明示されることとなりました。 さらに、2010年には加算対象医療機関の要件緩和と加算額の引き上げが行われ、この制度の普及が加速されてきました。
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(医師事務作業補助体制加算の施設基準より)
メディカルセクレタリーは、このような業務を行います。
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- 診断書の作成代行
- 紹介状、返書作成代行
- 処方せんの作成代行
- 入院手続きに関する書類の作成代行
- 退院サマリーの作成代行
- 各種保険診断書(入院証明書)作成代行
- 介護保険における主治医意見書作成代行
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- 診療・治療に関するデータ収集・管理
- 院内統計業務
- カンファレンスの準備業務
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- 診療録(カルテ)の代行記載業務
- 電子カルテシステムの代行入力業務
- オーダエントリシステムの代行入力業務
- 診察、検査、手術などの予約代行
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- 感染症サーベイランスの業務
日本の「医師事務作業補助者」に相当する職種として、欧米では「メディカルセクレタリー(医療秘書)」と呼ばれる職種が存在します。その業務は1920年代に登場しており、やはり多忙な医師の右腕として幅広い業務を担って活躍してきた歴史があります。
一方、日本では医療秘書に対する制度上の裏付けがなかったため、その業務内容はまだ確立に至っていません。しかし、日本でも医師事務作業補助加算の新設を契機に、欧米の「メディカルセクレタリー」に匹敵するような業務が求められていくと考えられます。
~日本版メディカルセクレタリーの実現に向けて~
欧米のメディカルセクレタリーが1~2年の教育を受けて養成されてきたのに対し、わが国の医師事務作業補助者はわずか32時間ときわめて短い研修時間であることは否めません。
そこで、まずは比較的着手しやすい「医療文書の作成」業務に必要とされる基礎的な知識と技術を身につけ、医療現場に貢献していくことが第一歩といえます。もちろん、より役割分担を推進するという観点からは、欧米の「メディカルセクレタリー」に匹敵するようなスキルを、段階的に習得していくことが重要です。
本機構では医療機関未経験者からのキャリアチェンジを推進する観点から初任者に最低限必要な知識の習得を支援するとともに、将来を見据えて広く「日本版メディカルセクレタリー」の普及を図ることをめざしています。
医師事務作業補助者の配置により、医師をはじめ、患者、地域や病院にとって、下記のような効果が期待されています。
本機構が養成・推進する医師事務作業補助者が活躍し、その実績を積み重ねることにより、より活躍範囲の広い上級の「メディカルセクレタリー」を養成し、普及する道筋も開かれます。よって、本機構では、「医師事務作業補助者」に留まらず、より貢献度の高い「メディカルセクレタリー」の確立を目標としています。
医療従事者・地域社会から必要とされる人材「メディカルセクレタリー」の活躍は今後益々期待が高まっています。
《メディカルセクレタリー(初級)認定試験の位置付け》
本機構では、将来的には欧米に匹敵する人材、いわゆる「上級メディカルセクレタリー(上級MS)」を普及していくことが重要と考えています。
他方、現在の医療保険制度において「医師事務作業補助者」に課せられている教育時間は、わずか32時間と定められています。この時間で学習できることには限りがありますが、医療機関未経験者にキャリアチェンジの門戸を開くという観点では、この制度には大きな意義があると考えられます。
このようなキャリアチェンジを志す方々を支援するため、本機構では「メディカルセクレタリー(初級)」の認定を行ないます。初級MSは、医療機関において「医師事務作業補助者」として勤務するために最低限必要な知識や、医療文書の作成技術を持っていることを認定するものです。
今後、わが国に初級MSが定着し、上級MSを志す方々が増えた段階で「上級メディカルセクレタリー」の認定も行なっていきたいと考えております。